【家族の肖像】ネタバレ解説。カンバセーション・ピースと呼ばれる18世紀の家族の肖像画を蒐集している老教授(バート・ランカスター)の下に愛人コンラッド(ヘルムート・バーガー)の為に部屋を貸して欲しいというブルモンティー夫人が現れる。教授は渋々部屋を貸すことにしたが……。
【家族の肖像】のあらすじ
爆発音から始まるオープニング、心電図からの心拍数を記録する紙の流れを古典絵画のように映し出す。
教授(バート・ランカスター)が、画商達と肖像画の購入の話をしている所へ、教授の見知らぬ女性ビアンカ・ブルモンティー公爵夫人が突然訪ねて来て、空いている筈の上の階を貸して欲しいと言う。
教授は絵画の購入も部屋を貸す事も断ったのだが、ビアンカの娘リエッタとその許嫁ステファノが、教授が購入を検討していた家族の肖像画を手土産として持ってきたので教授は渋々上の階を貸す事にした。
ところが、突然大きな物音がし教授が上の階へ行くと、そこには若い男コンラッド(ヘルムート・バーガー)がいた。
借り主はコンラッドだった。
物音は、教授に断りなく部屋を改装しようとしたためだった。
教授だけでなく、コンラッドも聞かされていた話と違うという。
その後、ブルモンティー公爵夫人がやって来てコンラッドは自分の愛人で、部屋は彼の為の物だと説明。
改装しようとして壊した部分を元に戻すことでその場は収まった。
【家族の肖像】ネタバレ解説
暴漢に襲われたコンラッド
ある夜、教授が物音に目覚め、音のした階段へ向かうと何者かが駆け足で逃げ去り、顔を負傷したコンラッドがその場にいた。
教授は、教授の母親が作ったという本棚の裏の隠し部屋にコンラッドを匿う。
その後、教授はコンラッドと音楽や絵画について語り、2人は親睦を深めた。
しかしある夜、教授はコンラッドとリエッタ、ステファノがドラッグを吸いながら乱交しているのを目撃してしまう。
そのお詫びとして、リエッタに旅行に誘われたが教授は断る。
教授はリエッタの申し出を断った代わりに、彼らを自分の家での食事に誘う。
*
リエッタ、ステファノ、コンラッド達が次々と食卓に着席する。
それは、あたかも教授が蒐集している家族の肖像画(Conversation Piece)が再現されたかのようだった。
しかし、その後遅れてビアンカ・ブルモンティーが到着すると穏やかだった雰囲気は一変し、場は険悪ムードに。
ブルモンティー公爵夫人はコンラッドと別れると言い出し始めたからだ。
その理由はコンラッドが左翼過激派の一員だから主人が彼を認められないからだという。
それに対してコンラッドは、「夫は共産党員の閣僚の暗殺に失敗したから」そんな事を言いだしたのだと反論する。
更にステファノがコンラッドを罵倒したので、コンラッドはステファノを平手打ちした。
場は何とか教授が収めたが、コンラッドは皆に別れを告げてその場を去った。
結末
コンラッドから教授のもとに手紙が届く。
それはコンラッドが死を決意したかのような内容だった。
それと同時に大きな爆発音がして教授と使用人がコンラッドの部屋に駆けつけたが、コンラッドはもう死んでいた。
彼の死はガスを使った自殺と思われた。
その後、ビアンカとリエッタが病床の教授を訪れる。
ビアンカはコンラッドは自殺したと教授に説明するが、リエッタはコンラッドは自殺に見せかけて消されたのだと教授に告げる。
コンラッドが居なくなり、人が居る筈のない上の階から足音が響く。
そして教授は静かに息を引き取った。
感想とまとめ
ヴィスコンティやフェリーニの他、【青い体験】のようなB級も含めてイタリア映画はU-NEXTが得意としていますが、【家族の肖像】のリマスター版がプライム・ビデオの見放題に来た事がまず驚きます。
*リマスター版は映像が暗めです。
この映画が長い、冗長だとの意見が見受けられますが、そういう方はヴィスコンティ映画には向いてないかもしれません。
きっと4時間もある【ルードウィヒ/神々の黄昏】を見たら卒倒するでしょう。
ハリウッドのアクション映画などと比べれば、演劇がベースのヴィスコンティ映画は超スローテンポで展開します。
ご存知のようにヴィスコンティとヘルムート・バーガーは愛人関係で、2人で仲良くヴィスコンティのミラノの城で過ごしたと聞きます。
教授が暴漢に殴られたコンラッドを隠し部屋で介抱するシーンは、ヴィスコンティとバーガーの普段の生活ように見えなくもない。
そして、ヴィスコンティの性的嗜好を反映してか、この映画でも男性のシャワーシーンが……。
【ボッカチオ70】【地獄に堕ちた勇者ども】【ルードウィヒ/神々の黄昏】とヴィスコンティ映画に出演してきたヘルムート・バーガーのヴィスコンティ映画最後の出演作。
またバート・ランカスターは【山猫】以来のヴィスコンティ映画の出演となりました。
シルヴァーナ・マンガーノは【ルードウィヒ/神々の黄昏】のコジマ・ワーグナーもそうでしたが、本作のビアンカ・ブルモンティーでも傲慢で嫌味な女性を雰囲気満点で上手く演じています。
終盤で左翼、資本家と言い争うのですが、当時のイタリアでは左翼過激派、赤い旅団によってモロ首相が誘拐された上に殺害されてしまう暗い時代背景があります。
ヴィスコンティ映画の玲瓏な美麗さを印象付けるカメラは、アルマンド・ナンヌツィーかパスクワーレ・デ・サンティスが多いのですが、今回はパスクワーレ・デ・サンティスでした。
カメラワーク、役者の立ち位置、画面のコンポジション、両名とも毎回素晴らしい仕事をしています。
- ベランダから見える教会などのローマの風景は全て撮影セット。
- コンラッド、リエッタ、ステファノがドラッグを吸っている場面の挿入歌はイーヴァ・ザニッキのTestarda io
- 英語版タイトルのカンバセーション・ピースとは、18世紀、1720年代からイギリスで流行した群像肖像画の事。
©Minerva Pictures
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